誰がモラハラ被害者になりうるか、また、被害にあわないために。
私は男性で、モラハラと言われるような人とは付合ったことは無いのですが、最近私が多少の関心を持っているモラハラについて考えたことを書きます。
本稿は
『カウンセラーが語るモラルハラスメント』谷本惠美、2019、晶文社
『メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服』崔烔仁、2016、星和書店
の二冊の本と
私が見聞きした話を参考にしています。
モラルハラスメント(以下モラハラ)をする人は、付き合っている最中には見破りにくいようです。
モラハラをする人は付合っている最中には、とても献身的で身なりも羽振りも良いようで、一見完璧で理想的な人物に思われるようです。
それが、結婚した途端にそれまでの献身的な態度は一変し、パートナーを自分の一部や付属物のように見なし、人権を認めず、文字通り支配をし出すようになります。
なんということでしょうね。
大雑把にモラハラがどんなことか見て見ましょう。
心理的、性的、経済的虐待、私刑を駆使しますが、巧妙で、パートナーに「自分が悪いのかもしれない」と罪悪感を植え付けるように振舞います。
例えば、パートナーが友人と外出したいという場合、モラハラの人は言葉の上では「いいよ」と言うものの、パートナーが外出から帰ってくるとモラハラの人が怒っており、理由も教えてもらえず、外出とは関係のない家事のことなどを責め続けるなどを通して、次第にパートナーは自尊心を削られ、「自分が自由を主張しなければ関係が保たれる」といった心理に追い込まれるようになるようです。
何がきっかけで相手が激怒しているか分からず、自ら相手に従うように促すのがモラハラのやり方です。
直接的な暴力や禁止の文言は使われず、自信を失わせたり、罪悪感を植え付けたりする言葉の暴力、睨みつける、威圧、罰を与える等が使われるようです。
このようにモラハラをする人と関わると大変な思いをすることが分かります。
モラハラをする人もモラハラに引っかかりやすい人も幼少期からの育ちが適切さに欠くことが考えられます。
谷本氏によると
自分の思い通りにいかないことがあることや自他の境界を認めることは葛藤を伴いますが、それを克服しない方が楽なので、なんでも思い通りになる幼いころの楽な方法をモラハラという手段で大人になっても使い続けている。
とのこと。
つまり、モラハラの人というのは適切な葛藤処理の方法や自他の境界の感覚が未発達なまま大人になり、自己中心的に振舞っています。
モラハラの人は、自分の楽園を作るため、つまり社会的信用も得られ簡単に離れられず相手を支配し続けるための結婚生活を送るために、交際中は完璧な人を演じるようです。
では、そんな完璧な交際相手を過信しないためには。
モラハラに引っかかりやすい傾向として私は、100%幻想を挙げたいと思います。
崔氏によると
100%幻想とは、世界中探せばだれか自分の人生の苦悩を100%丸ごと抱えてくれるのではないか、という思いです。
適切な養育では「こんなに愛してくれる親でも、なんでも解決できるわけではなく、自分でどうにかするしかないこともあるのだ」という感覚を得られるようですが、
外傷的育ちの人の中には、100%誰かに抱えてほしい、と言う思いを抱えたまま大人になってしまう人もいます(私もその傾向ありですが)。
外傷的育ちの人にはもっと他にも起こりうる傾向として、感情調節が苦手、自己評価がもろい、自己否定的、見捨てられ不安など、この辺りのことはACや発達理論の本などにもたくさん書いてあります。
ここで、100%幻想の人とモラハラの人が交際関係に発展してしまったらどうでしょう。
交際中、甲斐甲斐しく完璧で理想的な恋人として振舞うモラハラの人と、誰かに丸ごと抱えてほしいと思っている100%幻想の人、互いに引き合ってしまうのうではないでしょうか。
外傷的育ちを振り返ることは辛さを伴うことであり、軽々しくちょっとやってみなよ!と言えることでもないですが、外傷的育ちの人が自分の為の人生を歩む為にはモラハラ被害にあってしまっては遠退く一方に思われます。
モラハラの人もまた不適切な養育の被害者なのだ、ということも言えるかもしれませんが、被害者だから他人の人生を支配、利用していいものではないと思います。
心理的につらい作業になるので、心理士、精神科等を利用することもできます。
被害にあわないために、自分に100%幻想がないか、という点は言えそうです。
今後も考えていきたいと思います。